*19/7/6 田んぼのど真んなか「ラウンドアバウト」なぜ? 見通しのよい交差点を改築する利点は

 

7/6(土) 15:00配信

乗りものニュース

事故多発でも、信号が設置できない交差点も

 日本語で「環状交差点」と訳される信号のない円形の交差点「ラウンドアバウト」。これが、田園地帯のど真んなかの交差点に導入されるケースがあります。なぜでしょうか。

【画像】ラウンドアバウトの通行方法 自転車・歩行者は?

 ラウンドアバウトは、2014年9月の道路交通法改正でその定義と交通方法が定められ、2018年末時点で全国およそ80か所まで増えています。交差点の中心に「中央島」と呼ばれるスペースがあり、その外周を取り囲むドーナツ型の通行路「環道」から放射状に道路が伸びる、というのが基本的な構造です。通行には次のようなルールがあります。

・環道へは左折で進入、環道からは左折で流出
・環道内は時計回り(右回り)で進む
・環道内を走行している車が優先
・環道へは徐行で進入(原則、一時停止不要)

 ラウンドアバウトが置かれた十字路の場合、左折方向に進む際は環道に入って4分の1周、直進方向に進む際は半周、右折方向に進む際は4分の3周するような形で通行します。導入のメリットとしては、信号がないことから維持管理の面でも経済的、災害時にも対応できるほか、いくつもの道路が交わる交差点も制御しやすいといった点が挙げられます。

 冒頭に触れたように、このラウンドアバウトを見通しのよいシンプルな交差点にあえて導入するケースもあります。そのねらいは事故の防止です。

 2018年6月、愛知県愛西市に導入されたラウンドアバウトは、田園地帯のただ中で、2本の県道がまっすぐ交わる信号のない十字路を改築した事例です。見通しがよいとはいえ、この交差点ではクルマどうしによる出会い頭の衝突事故が、年間で4~5件起こっていたといいます。

「信号の導入も検討しましたが、交差点から100m以内の位置に信号交差点があり、間隔が近すぎるため車両が詰まる恐れがあることから、ラウンドアバウトを導入しました」(愛知県建設部)

 ラウンドアバウト化により、スピード抑制の効果も期待できるとのことですが、その大きな狙いは前述のように事故防止で、さらにいえば、重大事故につながりかねない「コリジョンコース現象」の防止にあるといいます。

 
見通しのよい交差点に潜む「目の錯覚」の危険

コリジョンコース現象」について、JAF日本自動車連盟)は次のように説明しています。

 直角に交わる見通しのよい交差点に、同じ速度で同時に接近する2台のクルマがあったとすると、相手のクルマは常に斜め45度で進み続けます。するとドライバーは、近づいてくるクルマを「止まっている」と錯覚し、注意を払わなくなり、危険を認識できなくなることがあるのです。これを「コリジョンコース現象」といい、結果としてお互いに交差点へ進入し、衝突に至ります。横から近づくクルマを、物の色や形をはっきり認識できる「中心視野」から外れた「周辺視野」でとらえやすいことから起こる、目の錯覚だそうです。

 交差点を直進したい場合も、いったん左折して環道を経由しなければならないラウンドアバウトであれば、そのような事故を防止できるというわけです。愛知県の建設課によると、ラウンドアバウト化からまもなく1年を迎える2019年5月現在で、事故は報告されていないといいます。

 静岡県焼津市にも、田園地帯の見通しがよい市道うしの交差点をラウンドアバウト化した事例があり、同市ではさらにもう1か所、同じような環境の交差点への導入を検討しています。

 その交差点は2019年5月現在、信号で制御されていますが、周辺で国道のバイパスが整備され、交わるふたつの道路の交通量がいずれも減っているそうです。しかし、一方の道路は見通しのよい直線が続くため、スピードが高くなる傾向があり、大きな事故につながるおそれがあるとのこと。そこで、路線全体の安全性を向上させるとともに、信号による待ち時間をなくして交通の円滑化を図る目的で、交差点をラウンドアバウト化するといいます。

 前述した愛知県愛西市の交差点では、ラウンドアバウト化以前、一時停止の規制が守られずに事故につながっていたケースもあるとのこと。信号でも一時停止の規制でもなく、「必ず環道に入る」という通行方法によって、スピードの抑制効果が期待できるラウンドアバウト、ほかにも様々な活用法があるかもしれません。