京セラは2025年にもLiDARセンサーモジュールを量産する
京セラは自動運転車の「目」となる高性能センサー「LiDAR(ライダー)」に参入する。2020年春をメドに試作品を出荷し、25年にも量産に乗り出す。ライダーは人がほとんど操作をしない高度な自動運転に不可欠な部品とされ、欧米勢が先行しているが、価格を半額以下に抑えて巻き返す。電機・電子部品の技術を生かしやすく、日本電産やパイオニアなどが相次ぎ参入しており、日本勢が高いシェアを握る可能性もある。
ライダーは半導体の一種である赤外線レーザーを対象物に照射し、その反射光を光センサーでとらえて距離を測定する技術。もともとは航空機や月面や山地の計測などに利用され、コストが高いが、障害物の検知で使われるミリ波レーダーと組み合わせて、より精度の高い測定が可能だ。
京セラが開発したのはライダーと画像センサーを組み合わせたセンサーモジュール。MEMS(微小電子機械システム)などの制御技術を生かして100メートル先の10センチ四方の障害物を認識できるという。京セラが基幹部品の多くを内製化し、さらに高額なミラーを使わないなどの強みを生かし、価格を50万円以下と現時点の競合の半値以下に抑える。同社の実験によると、競合品に比べて精度が6倍以上高く、ライダー専業の米ベロダイン・ライダーよりも高精度で安いとみられる。
車の自動運転は大きく5段階に分類され、現在は人間の操作が必要なレベル1~2まで実用化済み。レベル3~5は人の操作がほとんど不要になるが、周囲の状況を立体的に把握するには、ライダーが測定できる水準の精度が不可欠といわれている。京セラは20年春にも自動車関連メーカーに試作品を出荷し、自動運転のレベル3が本格化するとみられる25年に量産化に踏み切る方針だ。
京セラはスマートフォン向けの部品が強く、半導体や電子部品の売上高が全体の4割を占める。スマホ市場の変動の影響を受けやすいため、安定的な成長が見込める自動車関連を強化している。現在の自動車関連の売上高は2500億円と全体の15%だが、早期に3000億円に引き上げる。
自動運転用のセンサーは成長分野だ。英IHSマークイットによると、14年に約4900万ドル(約52億円)だったライダーの市場規模は24年には4.7億ドルに増える見通しだ。米アルファベット傘下のウェイモや米ベロダインが先行しているが、いずれも開発段階で勝負はこれからといえる。
独コンサルティング会社のローランド・ベルガーの貝瀬斉パートナーは「核となる要素技術を持つ日本勢の強みが生きる」とみる。今後はセンサーの精度を高めながら、コストをどれだけ下げられるかがカギを握る。
他の日本勢も成長が見込めるライダーの関連事業の強化に乗りだしている。日本電産は2025年度にカメラやセンサーで車外を検知する「先進運転支援システム(ADAS)」関連の売上高を1000億円にする目標を掲げる。4月にはオムロンの車載子会社を約1000億円で買収すると発表。オムロンは長距離の検知性能が高いライダー技術を持ち、電産の他のセンサー技術と組み合わせて安全性の高いシステムの構築を目指す。
シャープはCDの読み取りや監視カメラに使う赤外線センサー技術の自動運転への応用を進める。ライダーに使う赤外線レーザーを開発しており、年内にも福山工場(広島県福山市)で量産を始める計画だ。
ライダーは独ボッシュなどの大手サプライヤーもまだ開発中で、京セラなどが量産化で先行できれば、一定のシェアを握ることができる。ただ、ライダーを積む量産車は独アウディの「A8」など一部の車両に限られ、自動車業界では次世代技術として普及するかどうか慎重な見方もある。
代替技術の開発も進んでおり、NTTはカーナビに搭載する安価なGNSS(測位衛星システム)と安いアンテナで、人工衛星から誤差10センチメートルと高精度に自車位置を推定する技術を開発。実用化ができれば、現在のライダーに比べて大幅に導入コストを低減できる。ライダーが自動運転車に必須の要素技術になるかはどこまでコスト削減できるかがカギを握りそうだ。(赤間建哉、佐藤雅哉、千葉大史)
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